この記事は、天理教綾部分教会が発行している会報『陽気ぐらし通信(2026年4月号)』の内容を、Web用に再編集してお届けするものです。
先日、教会の庭に出たら、お母さんに連れられて小学校へ向かう子どもの小さな背中がありました。
背も小さく、ランドセルもピカピカだったので、きっと春から入学した新小学1年生なのでしょう。ああ、新学期が始まったんだな、と思いました。
綾部の桜は、少しずつ散り始めています。ゆっくりと、季節が移りかわろうとしています。
私は毎年この時期になると、少しだけ落ち着かない気持ちになります。新しい出会いの季節、それは嬉しい反面、どこか身構えてしまう季節でもあるからです。
正直に言うと、私には人見知りなところがあります。教会の後継者として、いろんな方とお話させていただく機会は多いのですが、はじめてお会いする方の前では、いつも少し緊張しています。
「変なことを言ってしまわないだろうか」「ちゃんと話せるだろうか」と、心の中でそわそわしてしまうのです。
そんな私が、いつからか、はじめての方と向き合うときに心の中でそっと思い出すようにしている言葉があります。それが、天理教の「いんねん」の教えです。
「いんねん」という言葉のイメージ
この「いんねん」という言葉を聞いて、みなさんはどんな印象を持たれるでしょうか。
「あの人とは、いんねんがあるからね……」
「これも何かのいんねんかもしれない」
日常の会話の中でも、ふとした場面で耳にすることのある言葉ですが、どうしてもどこか暗く、重たい響きを伴って使われることが多いように感じます。
実は、天理教で説かれる「いんねん」の意味合いは、このイメージとは、ずいぶん違っています。それどころか、まったく正反対の方向を向いていると言ってもいいくらいです。
天理教の「いんねん」を一言で表すなら、それは「親神様による、陽気ぐらしへの手引き」です。
身の上に起こる出来事や、ふと巡ってくる出会いを、親神様が私たちを陽気ぐらしへと導こうとして、そっと差し伸べてくださっていると受けとめる。前向きであたたかい考え方です。
この「いんねん」という教えについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてお読みいただければと思います。
あわせて読みたい → 天理教の「いんねん」についてわかりやすく解説|仏教の「因縁」との違いを比べてみた

4月の出会いにも「いんねん」を感じてみる
さて、こうした「いんねん」の考え方を、4月の新しい出会いに重ねてみると、どんな景色が見えてくるでしょうか。
新しい年度を迎え、職場に入ってきた新人さん。
子どもが学校から持ち帰ってきた、新しい担任の先生からのお手紙。
春の地域の寄り合いで、はじめて顔を合わせた近所のご家族。
こうした出会いは、一見すると「たまたま」の巡り合わせのように見えます。
けれども、天理教の「いんねん」の教えに沿って考えてみると、その景色は、また違った映り方をしていきます。
目の前にいるその人は、「たまたま隣にいる他人」ではなく、親神様が私のもとへ引き寄せてくださった、大切なご縁のある人になるからです。
また、天理教の教えから言えば、そもそも私たち人間は皆、親神様から見れば「兄弟姉妹」。そのように考えることができれば、4月に出会った「はじめまして」の人たちは、言わば「久しぶりに顔を合わせた兄弟」とも言えるでしょう。
受けとめ方が変わると、なにが変わる?
「芥川賞」で有名な作家、芥川龍之介の有名な言葉に、次のようなものがあります。
「運命は 偶然よりも 必然である。」
『侏儒の言葉』より
芥川はこの言葉で、「運命は単なる偶然の積み重ねではなく、その人の性格や生き方が形づくるものだ」と伝えたかったのだと読めます。
この言葉のポイントは、運命を外から降ってくるものとして受け身になるのではなく、内面の性格や選択の結果として見つめるところにあります。
これを天理教的に言い換えるとしたら「運命は偶然よりも いんねん である」となるでしょうか。
つまり、何が起こるかは偶然だけで決まるのではなく、その人の考え方、性格、行動に見合った出来事を「神様が引き合わせてくれる」という考え方です。
もしそうであれば、身の回りにいる人も「偶然、居合わせた人」ではなく、「親神様が引き合わせてくださった、大切なご縁のある人」となりますね。
新年度という「ふし」を、明るい芽吹きに
新年度は、たくさんの「はじめまして」が生まれる季節です。
いんねんの教えから言えば、そうした出会いの一つひとつには、必ずなんらかの意味があります。
ですから、この春は、出会う人にいつもより少しだけ、丁寧に接してみませんか?
「おはようございます」の声を、いつもより少し明るいトーンで。
いつもより少しだけ、機嫌が良さそうな表情で。
それだけで、その空間にはきっと「陽気」な雰囲気が出てくると思います。
小さな一歩かもしれませんが、そんなところから、陽気ぐらしの世界は少しずつ広がっていくのではないでしょうか。
これからも、あなたの心が少しでも明るくありますように。
「陽気ぐらし通信」では、日々の出来事の中から、心を明るくするヒントをお届けしていきたいと思います。
それでは、また来月。
(文・桑原信司)
